建設業許可を取得して順調にお仕事をされている状況でも、忙しさで建設業許可の更新を忘れてしまったり、専任技術者の退職により許可業種の一部廃業または全部廃業で建設業許可が無くなってしまうという状況になることも考えられます。
また、欠格要件に該当することになって、許可の取消しになるということもあるかもしれません。
ご自身が廃業することになったという以外にも、下請業者が無許可業者になるという場合も考えられますね。
どっちにしても、あまり考えたくない状況ですが、知っておいて損はない知識なので、今回は無許可業者になってしまった場合や、下請が無許可業者になったときにどうなるのかをお話しさせてもらいます。
目次
1.建設業許可の廃業ってどんな時にするの?
建設業許可を取得していても、色々な理由で廃業をされる事があるかもしれません。
次の①から⑥に該当したときは、許可行政庁(大阪府知事、奈良県知事、国土交通大臣等)へ廃業届を提出しなくてはなりません。
廃業届を提出せずに営業を行っていると、罰則の対象になります。
② 会社合併により建設業者である会社が消滅したとき
③ 建設業者である会社が破産の手続きを受けて解散したとき
④ ②③以外の理由により建設業者である会社が解散したとき
⑤ 許可を受けた建設業を(一部・全部)廃止したとき
⑥ 建設業許可要件を満たさなくなったとき
⑦ 建設業許可の更新手続きを行わず有効期限満了のとき
2.建設工事の施工中に廃業となった場合、請け負った工事はどうなるの?
『そろそろ更新の時期だな~と数ヶ月前に一度確認したけど、忙しくて更新手続きを忘れてしまい許可が切れてしまった。』
行政書士とお付き合いのない建設業者さんの廃業で一番多いパターンは、この更新忘れの許可切れじゃないでしょうか。
建設業許可だけでなく、電気工事業者登録の更新忘れで失効してしまったっていうのもよく聞きますしね。
廃業で無許可業者となってしまった場合、『建設業許可業者として500万円(税込)以上の工事の請負契約をしていたときに、許可が無くなった状態で引き続き施工しても良いのか』という問題が出てきます。
この場合、途中で工事を止めてしまったら、工事が未完成となり発注者に大きな損害を与えることになってしまいます。
発注者保護の観点から、建設業許可業者として有効に契約した工事に限って、引き続き施工することが出来ます。
①発注者への通知義務
発注者保護の観点から、引き続き工事を続きけても良いですよと言っても、そのまま黙って工事を続けるのはよくありませんよね?
発注者は、建設業許可がある業者だからということで、工事を依頼されたという事も考えられます。
なので、廃業の理由のいかんを問わず、廃業から2週間以内に発注者へ無許可業者となった旨を通知しなければなりません。
②発注者からの契約解除
発注者は、無許可業者に工事をしてもらうのは不安だと感じるかもしれません。
もちろんこの発注者には、元請も含まれます。
この場合、次の①から③の日から30日以内に限り建設工事の請負契約を発注者から解除することが出来ます。
② 建設業許可の効力を失ったことを知った日
③ 処分があったことを知った日
③主任技術者や監理技術者を現場に配置する
主任技術者や監理技術者を工事現場に配置する義務があるのは、建設業許可業者だけなんですが、この工事に関しては建設業許可業者としてみなされるので、主任技術者や監理技術者を工事現場に配置する必要があります。
建設業許可業者としてみなすという事は、その他の義務(施工体系図や施工体制台帳の整備等)も引き続き発生するので注意が必要です。
(許可の取消し等の場合における建設工事の措置)
第二十九条の三 第三条第三項の規定により建設業の許可がその効力を失つた場合にあつては当該許可に係る建設業者であつた者又はその一般承継人は、第二十八条第三項若しくは第五項の規定により営業の停止を命ぜられた場合又は前二条の規定により建設業の許可を取り消された場合にあつては当該処分を受けた者又はその一般承継人は、許可がその効力を失う前又は当該処分を受ける前に締結された請負契約に係る建設工事に限り施工することができる。
この場合において、これらの者は、許可がその効力を失つた後又は当該処分を受けた後、二週間以内に、その旨を当該建設工事の注文者に通知しなければならない。
2 特定建設業者であつた者又はその一般承継人若しくは特定建設業者の一般承継人が前項の規定により建設工事を施工する場合においては、第十六条の規定は、適用しない。
3 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項の規定にかかわらず、公益上必要があると認めるときは、当該建設工事の施工の差止めを命ずることができる。
4 第一項の規定により建設工事を施工する者で建設業者であつたもの又はその一般承継人は、当該建設工事を完成する目的の範囲内においては、建設業者とみなす。
5 建設工事の注文者は、第一項の規定により通知を受けた日又は同項に規定する許可がその効力を失つたこと、若しくは処分があつたことを知つた日から三十日以内に限り、その建設工事の請負契約を解除することができる。建設業法第29条の3
3.工事の請負契約は締結したけど、まだ着工して無い工事はどうなるの?
建設業許可業者として、有効に締結した建設工事の請負契約に関しては、着工前であっても、施工中の廃業と同じく、建設業許可業者として取り扱われます。
なので、この工事に限って施工することが出来ます。
この場合も、発注者への通知等は必要になりますので、2週間以内に忘れず通知してくださいね。
4.建設業許可業者に戻るには?
更新忘れでの廃業は、気づいたら直ぐに新規で許可申請をすれば、許可業者となることが出来ます。
専任技術者の退職などにより、許可要件を欠くことによる廃業は、要件を満たした段階で許可申請をして許可業者になることが出来ます。
しかし、違法行為等で処分の対象となり、許可の取消しとなった場合、取消しの処分から5年間は建設業許可申請をすることが出来ません。
なので、欠格要件がどういうものかや、どういう事で監督処分になるのかを知ることはとても大切です。
何事も、転ばぬ先の杖が大事になってきます。
5.最後に…
自身の許可が飛ぶのも、下請業者さんの許可が飛ぶのも考えたくないぐらい嫌なことです。
お家のリフォームを依頼した業者さんから「建設業許可が無くなりました。」という連絡を受けて、どうしたら良いものかと悩んではる方もいらっしゃるかもしれません。
信頼を築くのは時間がかかりますが、崩れるのは一瞬です。
そうならないためにも、更新の期限管理や欠格要件のチェックはしっかりとしてもらえたらと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。