当事務所では、もう既に法人成りをした数年後に建設業許可取得のご相談をいただくケースが多いため、法人設立からのお付き合いの会社さんは少ないです。
せっかくご相談に来てもらって色々な許可を取得しようと思ったのに、事業目的がアカンやんって事が本当に多いので、建設会社の法人設立の際に注意して欲しい『事業目的』にスポットを当ててみようと思います。
個人から法人になって、そのタイミングで建設業許可を取得される方や、法人設立してから数年後に許可を取得されたり、色々だと思いますが、許可取得のタイミングで「やってもたー!!」とならないように、法人設立の際の参考にしていただければ幸いです。
目次
1.会社の事業目的は、色々な許可申請でチェックされます
会社を設立するときは必ず定款を作成し、その定款に記載しなければいけない項目の一つに『事業目的』があります。
なぜ、わざわざ『事業目的』決めないといけないのかというと、会社は、定款に記載された事業目的の範囲内で法人格が認められているため、定款に記載された事業目的以外の事業はできないからです。
事業目的に無い事業は出来ないなら、ありとあらゆる事を思い付く限り書いておけばOKというわけではありません。
会社の情報が記載された『履歴事項全部証明書』という物には、会社の事業目的などの情報が記載されていて、法務局で誰でも請求して見ることが出来ます。
ありとあらゆる事業をする会社って、逆に本業なんなんですか?って怪しまれて融資が下りにくいという話はよく聞きます。
事業を行う上で必要な事業目的だけを書くようにしましょう。
①建設業許可で必要な事業目的は?
建設業は現在29業種あり、全業種の許可を取得しようと思ったら原則として29業種すべての記載が必要になります。
縦にズラッと29業種を記載すると非常に長くなってしまうので、こんな感じでまとめて記載されている場合もあります。
1.土木一式工事業、建築一式工事業、大工工事業
2.左官工事業、とび・土工・コンクリート工事業
3.石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業…
②建設業関連の事業目的も入れる
建設業を営む会社であったら、今後の事業展開で必要となる事業目的も入れるようにしましょう。
例えば、宅建業許可を持っていたら、自社で土地を購入して住宅の新築工事をして、その住宅を売買することが可能になります。
更に、中古住宅を安く購入し、その後内装工事をして売買したり、オシャレな古民家風にリノベーションをして売買するなど、経営の幅が広がります。
また、元請業者からの要請で産業廃棄物を中間処理施設へ運ぶためには産業廃棄物収集運搬業許可が必要になるので、建設業者さんは産業廃棄物収集運搬業を事業目的に入れておくべきだと思います。
建築士さんがいらっしゃる会社であれば、建築士事務所を開設して設計から施工まで一貫して請け負う事も可能になります。
工事現場の安全管理のために必要な警備員も自社で賄おうと思った場合は、警備業認定申請も必要になります。
このように、本業の建設業を営む上で必要となる事や、事業拡大のためにするかもしれない事を事業目的をして入れてみてはどうでしょうか?
2.事業目的でよくあるケース
①建設工事の種類が足りない
これは本当によくあるケースです。
もともと屋根、防水、塗装しかやってはらへんかったから、この3業種しか目的に記載されてなくて、その後社長が資格を取られて業種追加しようと思ったけど、目的が無かったというような感じです。
建設業許可申請時に必要な工事業種が事業目的に記載されていない場合は、「次回の決算変更届には、今回の申請業種が確認できる事項を追記した定款を添付し、商業登記簿謄本も変更する」旨の誓約書を添付する必要があります。
②工事の名前が違う
これもたまに見るケースで、工事業種の名前が微妙に違っちゃってるやつです。
正しくは『内装仕上工事業』なんですが、これが『リフォーム工事業』になってしまってる事があります。
他には『建築一式工事業』が『建築総合工事業』とか、これは何の工事のことを書いてるのかな?というのもたまにあります。
こういう事業目的の場合、ダメもとで府庁に問い合わせてみるんですが、大体は「正しい事業目的を次回の決算変更届までに追加しておくように」と指導されることになります。
3.最後に…
会社の事業目的は、今後取得するであろう許認可を見据えたものである必要があります。
明確なビジョンまでは必要ありませんが、「今後こんなことしたいねん」とご相談いただければ、どんな許認可が必要になり、具体的にどういった事業目的を追加すべきかお調べすることが出来ます。
せっかく会社を作ったのに、いきなり事業目的を変更しないとダメなのは時間とお金がもったいない。
本当に事業目的が微妙なケースが多いので、会社設立をされる場合は、今後の事業展開を意識した会社にしてもらえたらと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。