経営事項審査(経審)は、建設会社が一年間どんな営業活動をしてきたかを点数にするものなので、原則として、一夜づけで何とかなるような物ではありません。
しかし、この社会性等(W)の項目は他の項目に比べると対策しやすく、経審の点数アップを狙うのであれば、一番初めに見直すべき項目です。
この社会性等は、審査基準日(直前の決算日)時点で、『有る』のか『無い』のかこの2択なんですよね。
なので、技術者の加点みたいに6か月と1日以上の雇用が必要とか、そんな風に、決算直前で対策しようと思っても間に合わないってのじゃありません。
今回は、社会性等の中でも『一夜づけで対策できる』ものをご紹介させてもらおうと思います。
目次
1.建設業退職金共済制度(建退共)への加入と共済証紙購入で+15点
建設業退職金共済制度への加入はお済みですか?
まだの場合は是非ご加入を検討してください。
経審で加点してもらうためには、決算日までに建退共へ加入して、共済証紙を購入してもらう必要があります。
この制度は、現場を渡り歩く技術者が建設業界を引退される時に、退職金を貰えるようにと国が作った制度です。
今後、入札に参加して公共工事を落札された場合は、役所から建退共へ加入して、共済証紙を購入するように指導があります。
ですので、遅かれ早かれ加入するものなので、経審を受ける段階で+15点をもらってください。
※令和4年4月1日から、加入・履行証明を発行してもらい15点の加点を取る事が非常に難しくなります。
【ポイント】
- 決算日までに建退共へ加入手続きを済ませる
- 決算日までに「加入・履行証明書発行に関するフロー」の条件を満たす
- 加入後、一度も決算を迎えていない場合は、加点にならない
2.退職一時金制度はありますか?退職一時金制度の整備で+15点
従業員を常時10名以上(パート含む)雇用されている場合は、就業規則を労働基準監督署へ届け出る義務があります。
従業員が10名未満でも、届け出の義務が無いだけで任意で就業規則を作成することは出来ます。
就業規則は整備していても、退職一時金規程は定めていない。という会社さんが多いかもしれませんね。
退職一時金制度は法定では無いので、以前から経審を受けられているという会社以外で整備されているのは、非常に珍しいと思います。
ですが、就業規則に退職一時金規程を定めてもらうと、経審で+15点の加点になるので、ご検討いただけたらと思います。
「せっかくやから、退職金制度を作ろうか!」と思われた場合、一つ気を付けて欲しいことがあります。
それは、原則として建設業に従事している従業員すべてが対象となるようにしてもらうということです。幹部のみに支給されるというのでは、『従業員が退職する際の生活保障』や『従業員への功労報償』という趣旨から外れてしまうので、経審で加点されません。
【ポイント】
- 就業規則で退職一時金規程を定める
- 従業員すべてが対象となるように
- 勤続年数で金額が変わるように
- 従業員10名以上雇用されているなら社労士へ相談
3.法定外労働災害補償制度加入で+15点
法定外労働災害補償制度とは、政府が行っている労働災害補償制度(労災保険)に上積みして労災補償を手厚くする制度です。
2.(一社)建設業労災互助会
3.全日本火災共済協同組合連合会
4.(一社)全国労働保険事務組合連合会
5.民間の保険会社
との間で、保険契約を締結している場合に経審で+15点の加点となります。
ただし、次の6つの要件をすべて満たさないと加点されないので注意が必要です。
2.直接雇用だけでなく、下請けも含む
3.死亡および障害等級第1~第7等級までの全て補償
4.すべての工事現場が対象
5.審査基準日時点で有効な保険
6.法定保険である労災保険に加入している
4.適切な3保険への加入はお済みですか?入ってないと大打撃です
建設業界の社会保険への未加入問題は、何年も前から話題になっていますね。
グーグル検索で『建設業 社会保険』と検索すると候補に『建設業 社会保険 抜け道』と出てくるぐらいですから(笑)
自社がどんな保険に入るべきなのかというのは、『建設業許可要件で社会保険が追加になったけど、何に入れば良いの!?』という記事に書いていますので、良ければご参考にしてください。
経審でいう社会保険とは、
2.健康保険
3.厚生年金保険
この3保険を指し、この保険への加入は従業員を雇用している者が果たすべき社会的責任であると考えられます。
なので、この3保険に加入している建設業者へ〇点加点をするというのではなく、適切な保険に加入していない建設業者は社会的責任を果たしていないということで、未加入保険が1つある毎に-40点ずつ減点される仕組みになっています。
ということは、例えば従業員を雇用している建設会社が、この3保険に未加入だった場合は、-45点ということになり、取り返しのつかないことになってしまいます。
このような状況にならないように、適切な社会保険への加入を忘れないようにしてください。
【ポイント】
- 適切な保険へ未加入なら1つにつき-40点
- 全て未加入なら-120点
5.防災活動への貢献で+20点
防災活動への貢献とは、何か災害が起こった際に、官民で協力体制を整えて優先的に応急工事を行うといったことが基本となっています。
しかし、建設工事を行うだけが防災活動への貢献となるわけではなく、災害物資の輸送、河川の状況の報告や電源の供給など、出来る範囲で協力することでも防災活動への貢献となるようです。
経審を受ける際に、この防災活動への貢献もめちゃくちゃ大事なので、是非加入を検討していただきたいと思います。
もう+20点ってホントありがたい。
+20点って、実務経験の技術者さんを、経審を受ける全業種で20人ずつ雇うってことですからね。
これも絶対押さえておいて欲しいです。
〇防災活動への貢献ってどうやったら加点になるの?
経審を受ける会社が、官公庁と防災協定を締結している場合や、会社が加入している団体が、官公庁と防災協定を締結している場合に20点の加点を受けることが出来ます。
例えば、『大阪府防災ボランティア』への登録、官公庁と防災協定を締結している『建設業協会』への加入、堺市に会社があるなら『堺市の消防協力事業者』への登録なんかが考えられます。
あとは、宅建業をされている建設会社さんでしたら、ご加入の宅建業協会が防災協定を官公庁と締結されていると思うので、そちらで防災活動への貢献が認められます。
【ポイント】
- 出来る範囲の協力で貢献を
- 大阪府防災ボランティアへの登録
- 防災協定を締結している建設業協会への加入
- 消防の協力事業者登録等があれば登録
- もちろん決算日までに手続きを
6.最後に…
今回お話しさせてもらった加点ポイントは、審査基準日(直前の決算日)時点で『有る』のか『無い』のかで加点されるものを集めてみました。
社会保険は、すべての努力を帳消しにして、更にマイナスに持っていく程のダメージなので、絶対にちゃんとしておいてくださいね~
それでは、今回の一夜づけ加点のおさらいをしてみましょう!
・退職一時金規程 ➡ +15
・法定外労災補償 ➡ +15
・防災活動への貢献 ➡ +20
これを全て準備してもらえれば65点の加点になります。
しかし、社会保険が適正でなければ、-40点と残念な結果になってしまいます。
そしてこの社会性等(W)は、業種関係なく加点・減点されるので本当に重要なんですよね。
今回は、経審の点数を急ぎで上げたい時にどうすれば良いのかをお話しさせていただきました。
しっかり対策されて、皆さんが思う点数になればいいなと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。