建設業者さんが宅建業を兼業するメリットを詳しく解説。経審の点数アップにも繋がります。

記事更新日:

建設業と宅建業ってかなり相性が良いのはご存じでしょうか?

相性が良いのは分かってるけど、宅建業許可申請の手続きが煩わしかったり、本業の建設業が忙しくて後回しになったり…

そんなこんなで、建設業者さんが宅建業をされているのって、多いようで意外と少ないんですよね。

 

宅建業の許可には建設業と同じで『知事許可』と『大臣許可』があります。
大阪府で宅建業の申請をする際は、本庁ではなく咲洲庁舎になりますので、お間違いないようにお気を付けください。
奈良県の申請先は、奈良県庁 分庁舎6階です。

今回は、建設業者さんが宅建業をされるメリットとを詳しく解説させてもらおうと思います
建設業を営む方で、宅建業にご興味あれば、どうぞお付き合いください。

 

1.どういう事をしようと思ったら宅地建物取引業(宅建業)の許可が要るの?

建設業者さんが次のようなことを始めようと考えた場合、宅地建物取引業(宅建業)が必要になります。

※不特定多数の人を相手に、何度も表の〇印の行為をする場合に宅建業の許可が必要です。

区分 自己物件 他人の物件の代理 他人の物件の仲介
売   買
交   換
賃   貸 ×

 

2.建設業と宅建業のメリット

建設業者さんが宅建業をされる場合、いくつかのメリットが考えられます。
もしも、経審を受けて公共工事の受注を考えている会社の場合は、もう一つメリットが増えることになります。

 

① 建設工事 & 不動産の販売

建設業は、施主さんから工事の依頼を受けて、家の新築工事やリフォーム、リノベーションを行います。
なので、ご依頼が無かったら、工事には着手しませんよね?

しかし、宅建業許可を持っていたら、自社で土地を購入して住宅の新築工事をして、その住宅を売買することが可能になります。
更に、中古住宅を安く購入し、その後内装工事をして売買や、オシャレな古民家風にリノベーションをして売買するなど、経営の幅が広がります。

要は、自社の施工能力を活かして、新たな事業展開をすることが出来るということなんです。

それだけではありません。

不動産賃貸の仲介をした場合は、賃借人が退去した時や修繕が必要になった際には、家主さんから内装工事等の依頼が入ることも考えられます。

 
【ポイント】
  • 自社の施工能力を活かして新たな事業展開
  • 住宅の売買で売上高アップ
  • 工事の依頼先が増える可能性が高い
  • 工事の受注が増える可能性が高い

 

② 経営事項審査(経審)でのメリット

公共工事の受注と宅建業ってあまり関係ないような感じがしますが、実はそんなことはありません。
経営事項審査(経審)を受けて公共工事の受注を考えている場合、宅建業を営む事でどんなメリットがあるのかご説明させてもらいます。

公共工事の落札その物には、宅建業を営む事は関係がありません。
しかし、間接的に良い影響をもたらす可能性が、非常に高いのです。

 

・宅建業を兼業することの経審➡経営状況(Y点)への影響

先ず第一に、経審の点数が上がる可能性があります。
経営状況(Y)で出てくる『売上高』というのは、建設業の完成工事高+兼業事業売上高の合計です。

例えば、経営状況分析の指標の一つである『純支払利息比率』というものの計算式を見てみましょう。

この指標は、売上高に対する実質的な支払利息の割合を算出して、会社の健全性を点数にします。
支払利息の割合が低い方が点数が良くなり、高いと点数が悪くなります。

そして、分母の売上高は、建設工事の完成工事高だけではなく、兼業事業売上高も含めて計算されます。

ということは、分母が大きいほど算出される数値は小さくなりますよね?
兼業で宅建業で売上が上がると、必然的にここの数値は良くなってくるわけです。

 

経営状況分析では『純支払利息比率』の他に、『負債回転期間』『総資本売上総利益率』『売上高経常利益率』の3つが、売上高が影響を及ぼす指標となっています。

 

『純支払利息比率』『負債回転期間』『総資本売上総利益率』の3つは、売上高(兼業事業売上含む)が増えれば増えるほど点数が上がります。
しかし、最後の『売上高経常利益率』は売上高が増加すると点数が下がってしまう仕組みになっています。

結局上げた方が良いのかダメなのかどっちやねん!と思われるとかも知れませんが、売上高が上がれば点数が下がってしまう『売上高経常利益率』はY点へ反映される割合が低いため、売上高は上げる方が断然良いのです。

経営状況分析の指標 寄与率 上限値 下限値
純支払利息比率 29.9% -0.3% 5.1%
負債回転期間 11.4% 0.9か月 18か月
総資本売上総利益率 21.4% 63% 6.5%
売上高経常利益率 5.7% 5.1% -8.5%

 

・元請工事が増えることによる、経営事項審査(経審)への影響

建設会社で宅建業も営んでいる『株式会社A』が建築一式工事の経審を受け、公共工事の受注を考えているとしましょう。

株式会社Aは、自社で土地を購入し戸建住宅を建築したり、昨今需要が増えてきている障がい者のグループホームを自社発注自社施工で新築し、その後売買しました。
また、アパートの退去後のリフォームや修繕工事の依頼で内装仕上工事の受注や、定期的な外壁改修工事の受注も増えました。

このような場合、経審の点数にどういう影響があるかを見てみましょう。

 

(ア)自社発注、自社施工の新築工事は建設工事の実績になるのか?

 

結論から言うと、自社で土地を購入し、自社発注・自社施工の工事は、建設工事の実績にはなりません。

建設業法第二条第2項 

この法律において「建設業」とは、元請、下請その他のいかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請負う営業を言う。

 

建設業法では、建設業についてこのように規定されています。
ということは、自社発注・自社施工では工事の請負契約が発生しないため、建設工事とはならないのです。

建売住宅の新築工事を元請工事として完成工事高に計上するためには、宅建業を兼業ではなく、子会社を設立してそちらで宅建業の許可を取り、建設会社である親会社へ工事を発注する必要があります。

宅建業をされる場合は、同一法人で兼業事業として宅建業を行うか、子会社を設立するかを検討することも重要です。

【ポイント】
  • 自社発注で自社施工の場合は、建設業の工事に当たらない
  • 新築等の工事の売上を、経審の加点にしたい場合は、兼業ではなく子会社設立

 

(イ)家主さんからのリフォームや修繕工事の依頼は、業種間積み上げなどで点数アップ!

自社発注・自社施工の新築などは、建設業の工事とは認めてもらえませんが、家主さんや住人からの修繕依頼による工事は、もちろん建設業の工事となります。

例えば、家主さんからの依頼で退去後のリフォーム工事をした場合は、内装仕上工事として経審受審時に業種間積み上げで建築一式の加点にすることが出来ます。
そうすると、『完成工事高(X1)』が上がりますし、元請工事が増えることによって『技術職員数及び元請完成工事高(Z)』の点数アップにも繋がります。

『経審の評定UP対策と経審の点数の見方』に詳しく書いていますので、良ければご参考にしていただければと思います。

 

【ポイント】
  • 家主さん等からの依頼で工事をする場合は、経審の点数アップに繋がる

 

3.最後に…

今回は、建設業者さんが宅建業を兼業するメリットについてお話させていただきました。
兼業ではなく、子会社を設立して元請工事や完成工事高をアップさせる事も出来ます。

兼業とするか、子会社を設立するかは、税務のこともあるので、顧問税理士さんに相談されることも大切だと思います。

次回は、宅建業許可申請の手続や、注意点をお話しさせていただこうと思います。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 

建設業許可や経審のご相談

大阪・奈良の建設業許可や経営事項審査に関するご相談は、お電話・メールにて承っております。

メールは24時間承っておりますが、返信に2営業日ほど頂く場合がございます。

お電話でのお問い合わせ

「ホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日9:00 - 18:00(土日祝予約制)
メールでのお問い合わせ

    ご希望の連絡先 (必須)

    ページトップへ戻る