- 建設業の許可を持っているけど、宅建業の免許も取って仕事の幅を広げたい。
- 宅地建物取引士の資格を持っているので、資格を活かしたい。
建設業者さんが宅建業を兼業されるのは、メリットが沢山あるというお話しを以前させていただきました。
今回は、実際に宅建業の免許を取得するためには、どういった要件が必要なのかなどをお話しさせていただこうと思います。
目次
1.宅建業って何?
建設業者さんが、新たに不動産業を始めようと思った場合、宅建業の許可を受けなければなりません。
次のようなことを、不特定多数の人に対して、繰り返し継続して行う場合は宅建業の免許が必要です。
1.宅地建物の売買若しくは交換をする行為を業として行なうもの
2.宅地建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為を業として行なうもの
因みに自己所有の物件を賃貸する『大家さん業』は、宅建業の免許は必要ありません。
2.免許の種類は、知事免許?大臣免許?
宅建業の免許にも『知事免許』と『大臣免許』があります。
建設業許可をも知事許可と大臣許可があるので、もし建設業許可をお持ちでしたら、イメージしやすいんじゃないかなと思います。
宅建業を営む事務所が、1つの都道府県だけにあるか、2つ以上の都道府県にあるかで知事免許か大臣免許になるかが決まります。
事務所の設置場所 | 免許権者 | 免許の区分(申請先) |
---|---|---|
大阪府だけに宅建業の事務所がある |
大阪府知事 | 大阪府知事免許(大阪府建築振興課 宅建業免許グループ) |
大阪府と奈良県に宅建業の事務所がある |
国土交通大臣 | 国土交通大臣免許(本店所在地を管轄する都道府県) |
〇知事免許と大臣免許の申請手数料
宅建業免許申請の際に、行政庁へ払込む手数料は次のとおりです。
こちらは申請のために必要な手数料ですので、行政書士の報酬とは別に必要となる金額です。
- 知事免許 33,000円
- 大臣免許 99,000円
〇申請受理から免許通知までの標準処理期間
宅建業免許申請の標準処理期間も知事免許と大臣免許では違ってきます。
- 知事免許 5週間(GW、年末年始を除く)
- 大臣許可 100日程度
3.免許の有効期間
宅建業の免許の有効期間は5年間です。
有効期間は、免許日の翌日から起算して5年後の免許応答日までです。
このとき、有効期間の最終日(免許満了日)が日曜・祝日などであるかどうかにかかわらず、満了日をもって免許は失効し、満了日の翌日からは宅建業を営むことができなくなります。
有効期間満了後も引き続いて宅建業を営む場合には、免許の有効期間満了日の90日前から30日前までに、免許の更新申請をする必要があります。
(大阪府HPより)
4.宅建業免許の要件
宅建業免許を取得するためには、次の要件すべてを満たす必要があります。
どんな要件があるのか確認してみましょう。
・欠格要件に該当しないこと
・専任の宅地建物取引士を配置する
・事務所の要件
・政令使用人(支店長、営業所長)を常勤で置く
・営業保証金の供託または保証協会への加入
〇欠格要件を詳しく
建設業許可や産業廃棄物収集運搬業許可でも『欠格要件に該当したら許可しません』というものがありましたよね?
宅建業の免許についても、同様に欠格要件があります。
欠格要件の対象者
欠格要件の対象者は次のとおりです。
・申請者(免許を受けようとする、個人事業主や会社)
・申請者の法定代理人
・役員等
・支店長、営業所長
欠格要件
欠格要件を簡単に説明するとこんな感じです。
□ 免許取消処分の聴聞通知後に廃業した
□ 宅建業法に違反して罰金刑になった
□ 免許取得前に宅建業に関して不正なことをした
□ 認知能力に問題があって成年被後見人や被保佐人である
□ 破産してまだ復権を得ていない
□ 免許の取消し等の処分(処分しないこと)を受けてから時間が経っていない
□ 免許申請書や添付書類でウソを書いたり、逆に都合の悪いことを書かず処分された
□ 免許を取ったら悪い事しそうなのがバレバレ
□ 暴力団員だ
〇専任の宅地建物取引士を置く
宅建業法では、事務所に一定数以上の成年者である専任の宅地建物取引士を設置することを義務付けています。
「一定数」というのは、一つの事務所に「業務に従事する者」の5名に1名以上の割合です。
区分 |
法律に規定する専任の宅地建物取引士の人数 |
---|---|
事務所 | 業務に従事する者5人に1人以上 |
案内所等 | 1人以上 |
「業務に従事する者」というのは、宅建業の業務に従事する人であれば、代表者、役員(非常勤の役員を除く)すべての従業員等が含まれます。
勤務形態を問わず、継続的に勤務するのであれば、パートの経理の女性も勿論「業務に従事する者」に含まれます。
ただし、兼業事業を営んでいる場合は、宅建業と他の業務、例えば建設業との業務量を考慮して判断されます。
専任の宅地建物取引士の常勤性と専従性
専任の宅地建物取引士には、次の2つの要件が求められます。
常勤性 | 事務所に常勤していること |
---|---|
専従性 | 専ら事務所で宅建業に従事すること |
ですので、他の法人の代表取締役や常勤の役員を兼任したり、在学中の学生や、通勤できない遠方に住んでいたり、別の企業の従業員や複数の事務所の専任の宅地建物取引士を兼務したりしている場合は、専任制が認められません。
こういう場合は、専任の宅地建物取引士になることはできないのでご注意ください。
5.事務所について
宅建業を営む事務所は次の点に注意する必要があります。
〇事務所の範囲
2.継続的に業務を行うことができる施設を有し、宅建業の契約を締結する権限がある使用人(支店長、営業所長)がいること
【留意点】
- 本店で宅建業を営まなくても、支店で宅建業を営むときは、本店も宅建業を営む事務所となります。
- 支店を商業登記していない場合は、「〇〇支店」の名称は使えません。「〇〇営業所」や「〇〇店」のような名称を用いることになります。
〇事務所要件の適格性
物理的にも社会通念上も独立した業務を行いうる機能をもつ事務所として認識できる程度の形態を備
えていることが必要です。
① テント張りやホテルの一室などは認められません。
② 1つの部屋を他の者と共同で使用する場合も原則として認められません。
(大阪府HPより)
6.政令使用人(支店長、営業所長など)について
政令使用人は、宅建業に係る契約を締結する権限を有する従事者で、分かりやすく言うと、支店長、営業所長などが該当します。
本店には代表取締役や個人事業主が常勤するので、本店には政令使用人を置く必要はありません。
ですので、本店以外の事務所(従たる事務所)に政令使用人を常勤で配置する必要があります。
7.営業保証金の供託または保証協会への加入
大阪府知事免許の場合は、免許申請後おおむね5週間で免許の通知が事務所に届きます。
その免許の通知が届いても、直ぐには宅建業を営業出来るわけではありません。
万一取引で消費者に損害を与えた場合、その被害を最小限に抑えるために、「営業保証金を供託する」か、「保証協会への加入」のどちらかの手続を済ませ、免許権者へその旨を届出て「免許証の交付」を受けることになります。
免許の交付を受けて、晴れて宅建業の営業を開始することが出来ます。
※免許日から3か月以上経過して、「営業保証金の供託」も「保証協会への加入」の手続も済ませていないときは、未供託業者として免許を取消されることがあります。
〇営業保証金を供託する場合
区分 | 供託すべき金額 |
---|---|
主たる事務所(本店) | 1,000万円 |
従たる事務所(支店) | 500万円(1店舗ごとに) |
供託は、法務局で手続を行います。
支店が複数ある場合、供託金額が非常に高くなるので、多くの方は次の保証協会へ入会する手続きを選ばれています。
〇宅地建物取引業保証協会への加入
次のどちらかの保証協会に加入して「弁済業務保証金分担金」を納付すれば、営業保証金を供託する必要がなくなります。
- ハト → 全国宅地建物取引業協会連合会
- ウサギ → 全日本不動産協会
保証協会に入会するためには、協会の入会審査があり、分担金の他に、入会金などの諸経費も必要になります。
入会審査には4週間から6週間ほど係ります。
区分 | 弁済業務保証金分担金 |
---|---|
主たる事務所(本店) | 60万円 |
従たる事務所(支店) | 30万円(1店舗ごとに) |
今回は、宅建業の始め方についてご説明させていただきました。
宅建業を始める際には様々な手続が必要になります。営業開始までスムーズに進めれるように、事前準備をしっかりと行いましょう。