建設業許可を取ったけど、許可後の義務や気を付けないとダメなことは何?

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建設業許可を取得すると土木一式工事とその他専門工事は500万円以上(税込)の工事を、建築一式工事の場合は1,500万円以上(税込)の工事を請け負えるようになります。

「これである程度金額の縛りが無くなって、自由に工事が請け負える!」と喜んでおられることだと思います。

※『特定建設業が必要になる金額』と『専任性の必要な工事』については引き続き注意する必要があります。

 

しかし、良いことがある一方で建設業法の縛りを受けて『新たにすべきこと』や、『自由に出来なくなること』があることも知っておいて欲しいと思います。

 

1.建設業許可を取ったら、事業年度終了後4か月以内に決算変更届を提出する

個人事業主として建設業許可を取得されたのであれば原則として4月末日まで、法人で建設業許可を取得された場合は、事業年度終了後4か月以内に決算変更届を提出する必要があります。

決算変更届に添付する書類は、税理士さんが作成された決算書を建設業簿記に組替えた財務諸表や、事業年度内にどんな工事をしてきたのかを記した工事経歴書等を添付します。

  提出書類 備考
決算変更届の表紙  
変更届出書  
工事経歴書  
直前3年の各事業年度における工事施工金額  
使用人数 変更があった場合に提出
建設業法施行令第 3 条に規定する使用人の一覧表 本店とは別に営業所があり、営業所長が変わった場合に提出
定款の写し 変更があった場合に提出
財務諸表 税理士さんが作成してくれた決算書を、建設業簿記に組替える
完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表、事業報告書 法人のみ提出
10 法人事業税納税証明書 法人のみ提出
11 個人事業税の納税証明書

個人事業主が提出

(8月までに提出の場合は所得税の確定申告書のうち税務署の受付印のある第一表の写し)

12 健康保険険等の加入状況 加入の有無に変更があれば提出
13 委任状 行政書士が提出する場合

決算変更届は毎年提出する必要があり、面倒だと感じられる建設業者さんが多いのですが、決算変更届の提出を怠ると5年ごとの更新、業種追加や経営事項審査の申請が出来ません。

そうなると、せっかく取得した建設業許可を維持することが出来なくなったり入札のための手続きが出来なくなるので、毎年決算変更届は提出するようにしましょう。

 

2.許可申請後に変更があれば、提出期限内に変更届を提出する

申請書作成の際に色々なことを行政書士から聞かれたと思いますが、その情報に変更がある際は許可行政庁に変更届を提出する必要があります。

大阪府の場合は南港の咲洲庁舎へ、奈良県の場合は主たる営業所の所在地を管轄する土木事務所へ提出する必要があります。

届出が必要な変更事項は下表のとおりなので、経管・専技、会社の基本情報や役員等が変わった場合は提出期限内に変更届を提出するようにしましょう。

会社の履歴事項全部証明書に記載される内容に変更が生じた場合は、変更内容が反映されている履歴事項全部証明書の原本を添付して変更届を提出する必要があります。

 

問題 ①

『社長さんがお家を新築されて引っ越しました。この場合、建設業の変更届は必要でしょうか?』

 

社長さんが引っ越しっていうと法人役員等の変更?

でも法人の役員自体が入れ替わってるワケじゃ無いし…

少し悩むところですよね。

 

答え ①

『建設業許可の変更届は不要』です。

建設業許可の変更届は不要ですが登記内容は変わるので、司法書士さんにお願いして変更登記してもらうのは忘れないでくださいね。

 

変更届が必要な事項と、変更届の提出期限は以下のとおりです。

届出が必要な変更事項

提出期限

経営業務管理責任者

14日以内

専任技術者

14日以内

令3条の使用人(営業所の所長)

14日以内

欠格要件に該当した場合

14日以内

営業所の変更

30日以内

商号又は名称

30日以内

資本金

30日以内

法人の役員等

30日以内

株主等(100分の5以上を保有)

30日以内

支配人・個人事業主・支配人の氏名

30日以内

廃業

30日以内

事業年度終了後の決算変更届

4か月以内

 

3.建設業許可の欠格要件について、おさらいしておましょう!

建設業許可を取得する際に、うるさく行政書士から説明があったと思いますが、ここでも欠格要件のおさらいをしておきましょう。

欠格要件に該当すると建設業許可を失うことになってしまい、大きな請負金額の工事をしている建設業者にとっては大きな痛手となることでしょう。

欠格要件を知っておくことで、建設業許可を守れる可能性は非常に高くなります。

 

  • 当該法人・法人の役員等・株主(5%以上取得)・令3条使用人・個人事業主・支配人が対象です。
欠格要件
□ 警察のお世話になった(罰金以上)
□ 建設業法違反や建築基準法などに違反して処分された
□ 認知能力に問題があって成年被後見人や被保佐人である
□ 破産してまだ復権を得ていない
□ 許可を取消し等の処分(処分しないこと)から時間が経っていない
□ 許可申請でウソを書いたり、逆に都合の悪いことを書かず処分された
□ 暴力団員だ

簡単にいうとこんな感じです。

破産はダメですがブラックリストは大丈夫。

執行猶予中も欠格要件に該当します。

警察のお世話のレベルは、禁固刑以上は全部アウト

罰金刑は人を殴るのは勿論、髪を引っ張ったり胸ぐらをつかむのもダメ、ケンカの野次馬もアカンし、ケンカを囃し立てるのも勿論アウト。

2人以上で他人や他人の物をに危害を与える目的で凶器を準備したり、準備させたりで罰金もアウト。

人を脅迫したり、任務に背いて依頼者に損害を与えて背任罪で罰金もアウトです。

 

欠格要件に該当するようなことがあれば、直ちに行政書士にご相談することをお勧めします。

 

4.営業所と工事現場で標識(建設業許可票)の掲示が義務付けられています

営業所に掲示する建設業許可票(金看板)

建設業許可を取得したら業者名、代表者名、許可番号や許可業種などの情報を記載した許可票いわゆる金看板を営業所に掲示する必要があります。

もちろん金看板を発注して掲示しなくても、縦35センチ以上、横40センチ以上で許可票を紙に印刷して掲示するというのでも問題ないです。

 

工事現場に掲示する建設業許可票(元請のみ)

工事現場の入り口付近に許可票を掲示しているのもよく見ますよね?

あんな感じで工事現場に許可票を掲示する義務も生じます。

工事現場に掲示する許可票は、縦25センチ以上、横35センチ以上のものを用意してください。

営業所の許可票は全ての許可業者が掲示する必要がありますが、現場に掲示する必要があるのは、発注者から直接工事を請け負った元請け業者だけでOKです。

更新をして許可年月日が変わったり、業種追加などの変更事項があった場合は、こちらの標識も忘れずに変更するようにしましょう。

 

5.帳簿・営業に関する図書の備え付けと保存義務は?帳簿はどんなの?

営業所ごとに、営業に関する帳簿を作成し、添付書類とともに5年間保存(元請の場合と新築工事のときは10年間保存)しなくてはいけません。

 

帳簿の添付書類

  1.契約書、変更契約書(写し)

  2.特定建設業者が下請業者へ支払った金額と領収書(写し)

  3.施工体制台帳(法定作成義務がある場合)

  4.完成図(元請である場合)

  5.発注者との打合せ記録(元請である場合)

  6.施工体系図(元請で、法定作成義務がある場合)※

 

施工体制台帳と施工体系図を作成するのは?

施工体制台帳と施工体系図は次の場合に作成する義務があります。

  ① 公共工事

  ② 自社が元請で下請契約が4,000万円以上、建築一式の場合は6,000万円以上

 

「帳簿の様式って決まってるんかな?」とお客さんによく聞かれるんですが、この様式じゃないとダメというものではありません。

発注者が誰でどんな工事内容なのか、契約日(依頼があった日)や下請業者の情報、建築確認申請が必要であればその情報を記載出来るよう、使いやすい様式を作成してご使用ください。

 

6.専任技術者(専技)と主任技術者の違いについて

建設業許可要件に専任技術者(専技)というものがあります。

専任技術者と主任技術者の違いについて曖昧に理解されていて、知らず知らずのうちに建設業法違反をしてしまい指導や処分を受けたり、元請業者の監督責任を追及されるということもあります。

そうなると建設業許可を維持することが出来なくなったり、元請から仕事がまわってこなくなるなどの不具合が生じます。

知識は身を守る最大の武器です。

専任技術者と主任技術者の違いを正しく理解して、建設業許可や自社の信頼を守りましょう!

 

専任技術者と主任技術者を簡単に言うと

・専任技術者営業所で働く内勤で、請負契約を技術面から支える仕事をします。

・主任技術者工事現場で働く外勤で、個別の工事の進行管理安全管理を行う現場監督です。

 

専任技術者の職務について

専任技術者は基本的に営業所に常勤して、その職務に専念する必要があります。

多くの建設業者さんは、社長が経管専技と現場の技術者を兼ねています。

専技は営業所に常勤して現場に出るなと言われたら、せっかく建設業許可を取って事業拡大出来ると思ったのに逆に足枷になってしまいます。

一人親方や社長一人で技術者を兼ねている会社は、請負契約を結んでも全く工事が出来なくなります。

それではあんまりだということで、次の ①~③すべてを満たす工事であれば、専任技術者が工事を担当することが出来るようになっています。

専任技術者が担当できる工事の要件

  ①専任技術者が常勤する営業所で契約された工事

  ②営業所から1時間以内の現場(大阪府の見解)

  ③税込で4,000万円未満(建築一式は税込8,000万円未満)の工事

※②については許可行政庁によって見解が違います。

 

無許可業者時代は、社長や一人親方が自由に他府県の現場で工事をすることが出来ましたが、経管専技は営業所での常勤要件があるため、遠方の工事を担当することは建設業法違反になってしまいます。

この点もあわせてご注意ください。

 

7.専任性の必要な工事ってどんな工事?専技はつけないって本当?

専任性の必要な工事は、個人住宅を除く工事一件の請負金額が税込3,500万円以上(建築一式は税込7,000万円以上)の工事を言います。

専任性の必要な工事については、元請・下請に関係なく、その工事に専念する必要があります。

そして、この工事現場に専念する必要があるため、他の工事現場と並行して担当することが出来ません。

専任技術者は、既に営業所の業務に専念する必要があるので、例え専任技術者が担当する営業所で契約した工事であろうが、営業所の目の前の現場であろうが現場監督として仕事をすることが出来ないので注意してください。

 

8.許可取得後は、5年ごとに更新申請が必要です(有効期限は5年間)

建設業許可の有効期限は5年間です。

大阪府知事許可(奈良県知事許可)の場合は有効期限満了の3か月前から1か月前までに、更新申請をする必要があります。

また、更新申請の際に各種変更届(決算変更届を含む)が未提出である場合は、更新申請書を受け付けてもらえません

それに、期限ギリギリで未提出の変更届が複数あると、更新申請が間に合わず許可切れになってしまう可能性があります。

 

  1. 変更があれば、その都度変更届を提出する。
  2. 事業年度が終わればその都度決算変更届を提出する。

この点に気を付けていただくだけでも、違ってくると思います。

日々の忙しさで変更届の提出を忘れずに、建設業許可をどうぞ維持してください。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

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