今回は、建設業を新規で取得する場合の許可要件の1つ、『財産的要件』についてを詳しくお話ししていきたいと思います。
一般建設業許可の場合は、500万円以上あれば良いって聞いたことありますかね?
500万円以上はどういう形であれば良いのか、こういう場合はどうなの?っていう疑問を解決できればと思います。
目次
1.一般建設業の財産的要件は?
新規申請時点において、次の①②のいずれかに該当する場合は、倒産することが明白である場合を除き、請負契約を履行するに足りる財産的基礎や金銭的信用があることになります。
② 金融機関の預金残高証明書(残高日が申請日前4週間以内のもの)で500万円以上の資金調達能力を証明できる。
個人事業主の場合は?
個人事業の場合は直前の確定申告書で、
① 元入金+事業主借勘定-事業主貸勘定+事業主利益=500万円以上ある。
② 金融機関の発行する500万円以上の預金残高証明書で証明する。(残高日が申請日前4週間以内のもの)
- 元入金っていうのは、個人事業の場合の資本金に当たります。
- 事業主借は、事業主が個人の資産を事業用に提供した金額です。
- 事業主貸は、事業主が事業用の資産を個人消費した金額です。
この2つは貸借対照表の下の方に書いているので、ご自身の直近の確定申告書で500万円以上あるか確認してもらえたらと思います。
①の金額が500万円以上なかった場合は、②の金融機関が発行する500万円以上の残高証明書で資金調達力を証明することになります。
この残高証明書は、預金通帳のコピーではないので注意してくださいね。
法人の場合は?
法人の場合は直前の決算書の貸借対照表の右下部分、
① 純資産合計額が500万円以上あればOKです。
② 金融機関の発行する500万円以上の預金残高証明書で証明する。(残高日が申請日前4週間以内のもの)
- 自己資本=資本の部=(資本金+資本剰余金+利益剰余金)
①の純資産合計額が500万円以上無い場合は、やはり②の残高証明書で資金調達力を証明することになります。
ちなみに、最初の決算期をまだ迎えていない場合、会社であれば設立時の資産、負債、純資産を記載した「開始貸借対照表」を作成します。
通常、設立時は負債が無く、資産=純資産となり、資産の裏付けとして、商業登記(履歴事項全部証明書)の資本金額が500万円以上であれば要件クリアとなります。
これが、建設業者の法人設立は資本金500万円が良いと言われる理由ですね。
2.残高証明書の発行ってどうするの?
残高証明書は、口座のある金融機関の窓口で発行の手続きをしてもらう必要があります。
注意しなければいけないのが、残高の証明日が申請の4週間以内でないとダメなんですね。
発行日が4週間以内と間違えがちですが、発行日ではなく証明日が4週間以内なので注意してください。
残高証明書は、数年前の預金残高がいくらだったのか証明してくれたりもします。
なので、発行日ではなく証明日を4週間以内でということになります。
『預金残高が500万円を超える日がなかなか無い』というような場合は、売掛金の入金が多くあったタイミングで500万円以上の残高証明書を取得すれば、財産要件をクリアすることができます。
証明書の有効期限の兼ね合いもあるので、残高証明書の発行のタイミングは、行政書士と打ち合わせをしてからする方が良いかなと思います。
残高証明書のよくある質問
Q1.残高証明書を発行してもらう銀行は、都市銀行しかダメですか?
A1.都市銀行しかダメって縛りはありません。地方銀行でも信用金庫でも大丈夫です。
Q2.別々の銀行に300万円ずつ口座に入ってるんですが、残高証明書が2枚になっても大丈夫ですか?
A2.証明日が同日の残高証明書であれば、別々の銀行で発行された残高証明書でも大丈夫です。
Q3.直近の決算書の純資産合計が、280万円なので、銀行の320万円以上の残高証明書と足して500万円以上ってなりませんか?
A3.残念ながら、純資産合計金額と残高証明書の金額を合算することは出来ません。純資産合計が500万円未満の場合となるので、500万円以上の残高証明書で資金調達力を証明してもらうことになります。
Q4.現金で500万円は無いけど、500万円以上の不動産ならあります。ダメですか?
A4.残念ですが、財産要件は不動産の価格で証明することは出来ません。残高証明書で証明する方向になると思います。
Q5.会社の口座には500万円以上ないんですが、役員の個人口座には500万円あります。役員名義の残高証明書でも良いですか?
A5.申請者が法人である場合は、その法人名義の資金調達力を証明する必要があるので、お手数ですが役員さん個人名義の口座から会社の口座にお金を移してもらって、残高証明書を発行してください。
3.財産要件の要件確認は新規申請だけ?
新規で建設業許可を取得する際には、500万円以上の資金調達力を証明することになります。
その後は財産要件の確認は無いのかというと、そういうわけではありません。
更新時の要件確認
建設業許可は一度取れば永遠に有効というわけにはいかず、5年ごとに更新の手続きが必要になります。
その際にも財産要件の確認はされるんですよ。
ただし、この時は…
③ 許可申請直前の5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること。
という3つ目の財産要件を証明する方法が自動的に当てはまることになるので、純資産合計金額や残高証明書を発行する手続きは特段必要ありません。
業種追加時の財産要件確認
業種追加の手続きの際にも財産要件の確認は必要になってきます。
業種追加が1回目の更新が終わった後なら、
③ 許可申請直前の5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること。
の証明方法が適用されるので、別の方法を取る必要はありません。
しかし、更新を1度もしたことが無い段階で業種追加をする場合は、
① 直前の決算において、自己資本の額が500万円以上である。
② 金融機関の預金残高証明書(残高日が申請日前4週間以内のもの)で500万円以上の資金調達能力を証明できる。
のどちらかで改めて、500万円以上の資金調達力を証明する必要があります。
今回は、一般建設業の財産要件を詳しく解説してみました。
財産要件についての疑問を、少しでも解決することが出来たなら嬉しいのですが、いかがだったでしょうか。
最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。