「元請さんから建設業許可を取ってくれないと、今後仕事を回せないと言われたんだけど…」
「建設業許可が融資の条件だと言われた」
「お客さんがリフォームのためにローンを組もうと銀行に行ったら、その業者は建設業許可はあるんですかと言われて、工事業者を変えられた」
軽微な建設工事のみを請負う場合は建設業許可は必要ありませんが、昨今はコンプライアンス重視の観点から色々な場面で「建設業許可さえあれば…」と感じられる方が多いように思います。
建設業許可は要件を満たせば誰でも取得できますが、その要件を満たし、それを証明することは簡単なことではありません。
許可を取得することが出来れば社会的な信用も上がりますし、税込み500万円以上(建築一式の場合は税込み1,500万円)の工事を受注することが出来るようになります。
また、民間工事だけではなく公共工事の受注を考えておられるならば、先ず建設業許可取得が必要になります。
もしも、建設業許可を取得することにお困りでしたら、当事務所にご相談されませんか?
初回相談は無料ですので、先ずは電話かメールでお問合せください。
目次
1.建設業許可が『必要な工事』と『要らない工事』の違いは?
【原則】
- 建設工事の完成を請け負うことを反復継続して行う場合は、元請・下請・公共工事・民間工事・法人・個人事業に関係なく、建設業の許可を受ける必要があります。
【例外①】建設業許可が不要な軽微な工事
- 次の表の工事(軽微な工事と言います)のみを請負う場合は、例外的に建設業許可は必要ありません。
建設工事の区分 | 建設工事の内容(請負代金は税込みです) |
---|---|
建築一式工事の場合 |
・工事1件が1,500万円未満 ・延床面積が150㎡未満の木造住宅 |
建築一式工事以外の場合 | 工事1件が500万円未満 |
『軽微な工事1件』についての注意点
建設業許可を新たに取得しようと考えている建設業者さんに、
「どこまでが1件の工事になるんですか?」とよくご質問をいただきます。
原則として、契約書が別であったとしても、発注者、工事現場、完成すべき物が同一である場合は1件の工事となります。
- 契約書が2つ3つに分かれていても、正当な理由が無ければ同一の工事として合算しなければならない。
- 注文者が材料を提供する場合は、材料費(市場価格)とその運送費を請負代金に足さなければならない。
このことから、「うちは500万円未満の軽微な工事しか請負わないよ」とお考えであっても、500万円以上の工事を受注する可能性があるのではないでしょうか?
【例外②】その他、建設業許可が不要な場合
1. | 自ら使用する建設物を自分で工事をする場合(自社施工) |
---|---|
2. | 不動産屋さん(宅建業者)が、建売住宅を自社で工事する場合 |
①なぜ自社施工は建設業許可が不要なのか
この自社施工や不動産屋(宅建業者)が自社で建売住宅を建設する場合、なぜ建設業許可が不要なのか疑問に思われるかも知れません。
この時のポイントは『自社で施工する』という事なんです。
建設業法で定める「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。と規定されています。
なので、自社施工では請負契約がどこにも発生していないので、建設業法でいう建設工事に当たらず建設業許可が必要ないということになります。
また、この自社施工で注意しないといけない事は、自社施工は建設工事に該当しないので、建設業の経営経験としてカウントすることが出来ません。
宅建業からの建設業への参入の際には、気を付けないといけないポイントでもあります。
例外①②以外は建設業許可が必要
【例外①】【例外②】に該当しない工事を請負う場合は、建設業許可が必要になります。
建設業許可申請には標準処理期間というものがあり、申請をして全ての書類が揃ってから許可を受けるまでに、大阪府では30日間かかります。
500万円以上の工事を受注する見込みがある場合、工事着工までではなく請負契約の時点で建設業許可が必要になります。
標準処理期間だけでなく、必要書類の準備にも日数が必要になりますので「まだ大丈夫」ではなく早めの許可申請をお勧めいたします。
ちなみに、500万円(税込)未満の工事だけを請負われる業者さんであっても建設業許可は取得できます。
社会的信頼UPや融資、公共工事への参入をお考えの方は、建設業許可を取得してみてはどうでしょうか?
軽微な工事であっても『電気工事業』『浄化槽工事業』『解体工事業』については建設業とは別の法律の規定で、登録・届出制となっています。
無登録・無届状態での工事は違法となりますのでご注意ください。
2.必要な許可は『知事許可』?『大臣許可』どっち?
建設工事の請負契約を締結する事務所を営業所と言うんですが、この営業所が1つの都道府県だけにあるのか他府県にもあるのかで、知事許可と大臣許可のどちらが必要なのかが変わってくるんです。
例えば大阪府に1つだけ営業所がある場合は『知事許可』が必要で、大阪府と兵庫県に営業所がある場合は『大臣許可』が必要になります。
大阪府に営業所が2つあっても必要となるのは『知事許可』です。
「うちは本店が大阪にあって、奈良に営業所があるねん。でも奈良は建設業やってへんねんけど大臣許可が必要になるの?」こんなご質問をたまに受けるんですが、ポイントは建設工事の請負契約を締結する事務所ということなので、この場合は知事許可を取得することになります。
建設業に実質的に関与する場合が建設業でいう『営業所』に該当します。
- 1つの都道府県だけに営業所がある方⇒『知事許可』
- 2つの都道府県に営業所がある方⇒『大臣許可』
ちなみに大阪府知事許可の申請は、大阪城の近くの庁舎ではなく、咲洲庁舎が申請先ですのでご注意ください。
3.『特定建設業』と『一般建設業』って何?どっちを取れば良いの?
建設業許可は特定建設業と一般建設業に区分されていて、同一の業種について特定と一般の許可を同時に受けることは出来ません。
全ての業種について特定か一般に揃える必要はなく、例えば建築一式工事は特定建設業許可で内装工事に関しては一般建設業許可という様に許可を受けることが可能です。
「特定と一般て、特定っていうぐらいだから特定の方が凄いんですよね?」
はい、その通り特定は凄いんです。
まず大前提として、発注者から直接請け負う工事の金額についての制限は特定・一般ともにありません。
下請けに出せる金額の合計(税込)が変わってきます。
建築一式の場合は税込で6,000万円以上、それ以外のときは税込4,000万円以上を下請けに出す場合は特定建設業許可が必要になります。
例えば、自社が元請けとして6,000万円で請負契約をした土木一式工事を、A社に2,000万円(税込)、B社に1,500万円(税込)、C社に1,000万円(税込)下請に出した場合はどうでしょうか?
A+B+C=4,500万円(税込)になってしまうので、この場合は特定建設業許可が必要になります。
ここでのポイントは3点あります。
① 下請けに出す『金額の合計(税込)』
② 『超える』ではなく『以上』
③ 自社が元請けであること
まず①については下請けに出す合計金額なので、下請1社に出す金額が4,000万円(税込)以上なのではなく、下請に出す金額の合計ということ。
次に超えるではなく以上ですので、合計額が4,000万円(税込)になると特定建設業許可が必要になります。
最後に自分が元請けであるということ。
自分が下請けである場合は、孫請けに出す金額に制限はありません。
自分が元請けであることがポイントなんですね。
ちなみに、下請代金には元請が提供する材料費を含まないことが出来ます。
どういうことかというと、材料費を元請である自社が負担して下請けに出す金額を抑えることが出来るということです。
「建設業許可を取得して、大きな工事をドンドンするんだ!」とお考えであっても、特定建設業許可が必要になる金額についてを、お忘れにならないようにご注意ください。
4.建設工事の種類と業種は?
それでは次に建設業の種類と業種についてのご説明をしていきましょう。
建設業許可は、建設工事の完成を請負う営業を営む場合は下表の29の建設業の業種ごとに受けなければならないとされています。
区分 | 建設業の種類 | 建設工事の内容 |
---|---|---|
一式工事 (2業種) |
土木工事業 建築工事業 |
総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物・建築物を建設する工事 ※大規模又は施工が複雑な工事を原則として元請業者の立場で総合的にマネジメントする事業者向けの業種 ※大阪府知事許可では下請の一式工事も認められています。 |
専門工事 (27業種) |
大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、医師工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業 |
「うちは建築(土木)一式工事業の許可を持ってるから、なんでも出来るんですよね?」と仰られる方が本当にたくさんいらっしゃるんですが、土木・建築一式工事業の許可があっても、各専門工事の許可が無ければ500万円(税込)以上の工事を単独で請負えません。
建設業許可は業種別に許可を取る必要があって、許可が必要な工事が色々あれば、それを全て取る必要があります。
家を一軒建てる工事は建築一式工事ですよね?
一式工事として請け負った工事については、そこに含まれる専門工事業の許可は必要ありません。
ただし、この部分を自社で施工するためには、専門工事業の専任技術者の要件を満たす技術者を置く必要があります。
また、専門工事だけを請負う場合は専門工事の許可が必要ですのでそちらを取得してください。
ちなみに、各専門工事の許可が無ければ500万円(税込)以上の工事を『単独で』請負えないと言いましたが、この単独って何よ?って思いますよね?
例えば屋根工事業の許可をお持ちの業者さんが、屋根の改修工事と一緒に屋根の塗装工事も行った場合、これは屋根工事に附帯する工事として塗装工事の許可が無くても、屋根工事と一緒に工事を請負うことが可能なんです。
ただしこの場合、附帯工事(軽微な建設工事を除く)となる塗装工事を自社で施工する場合には、現場に塗装工事の専門技術者を置かないといけません。
その専門技術者は、塗装工事の専任技術者の要件を満たす必要があります。
資格者か実務経験者を配置するようにしてください。
軽微な工事では無い附帯工事について、自社で要件を満たす技術者を配置出来ない場合は、附帯工事の建設業許可を受けた建設業者に下請を出すようにしてください。
そして附帯工事と認められるためには、本体工事と関連した工事である必要があります。
また、本体工事より附帯工事の金額が高いことは原則として認められません。
造園屋さんがお庭の植栽工事と一緒に、浴室のリフォーム工事を請負ったとします。
もうこれは明らかにお庭とは関係ありませんよね?
浴室リフォームが500万円(税込)以上の工事であるならば、管工事業か内装仕上工事業の許可がある業者さんに下請に出してください。
5.建設業許可の要件は揃っていますか?
さて、ここからが本題です。
今までご説明させてもらったのは、建設業って何なの?ということをお話しさせてもらいました。
これからは、建設業許可を受けるために必要な要件をご説明させていただきます。
①経営業務の管理責任者はいますか? (令和2年10月1日改正がありました)
建設業許可で皆さんが一番苦労するのはこの『経営業務の管理責任者』の要件なのではないでしょうか?
建設業許可を取りたいとご連絡をいただく方へ「残念ですが、要件が足りません。」とお伝えする場合の9割がこの経営業務の管理責任者(通称『経管(けいかん)』)の年数不足になります。
新規で建設業許可の取得や、代替わりを考えておられる業者さん、経営陣の高齢化が進む中小企業だけでなく大手企業にも、現行の要件が過度の負担になっているということで、この『経営業務の管理責任者の要件』が令和2年10月に緩和されました。
改正された経営業務の管理責任者の要件についてご説明をさせていただく前に、先ずは経営業務の管理責任者の趣旨についてご説明させていただきます。
建設業は一品ごとの注文生産であり、一つの工事の受注ごとにその工事の内容に応じて資金の調達、資材の購入、技術者及び労働者の配置、下請負人の選定や下請契約の締結を行わなければならません。
また工事の目的物の完成まで、その内容に応じた施工管理を適切に行うことが必要であることから、適正な建設業の経営を行うため課せられた要件です。
『経営の安定化』のために会社・事業主全体を見る必要があるため、経営業務の管理責任者は、原則として本店に常勤する必要があります。
1人体制の経営業務の管理責任者(有効な社会保険に加入している必要があります)
まずはスタンダードな1人体制の経営業務の管理責任者の要件についてご説明いたします。
法人である場合は、自社の役員(常勤)に建設会社の役員(常勤)としての経験が5年以上ある方がいればOKです。
個人事業の場合は、個人事業主が5年以上の経営経験があること。
この5年間の経営経験は、連続して5年間同一法人で役員経験がある必要はなく、他社での役員経験や個人事業から法人成りした場合の個人事業主としての経験等、通算で5年以上あれば要件を満たします。
次に、法人の場合は常勤の役員のうちの1人、個人の場合は個人事業主が建設業の経営を6年以上補佐した経験があれば、経営業務の管理責任者の要件を満たします。
組織体制の経営業務の管理責任者(有効な社会保険に加入している必要があります)
令和2年10月改正までの経営業務の管理責任者の要件は『許可を受けようとする建設業の経営経験が5年以上、それ以外の業種については6年以上の建設業の経営経験』が必要でした。
「建設業の経営経験や経営補佐経験はあるが、それを証明するための裏付書類がない。」
改正までは、予期せぬ経営陣の交代等で経営業務の管理責任者の要件を欠くことになり、廃業を余儀なくされた業者さんもあったのではないでしょうか。
スムーズな経営業務の管理責任者の交代のために、令和2年10月改正により、1人の役員(個人事業主)だけで経営の安定化を図るのではなく、経営経験の足りない役員(個人事業主)を組織的にサポートし、経営業務の管理責任者を組織としてみる要件が新設されました。
この要件緩和により、建設業許可を取得できる業者さんが増えるのではないでしょうか。
常勤役員(個人事業主か支配人)の1人が次の図に該当し、かつ、補佐するものを置く
先ずは体制モデル①についてご説明いたします。
出来るだけ分かりやすくと図にしてみましたが、それでもやはり分かりにくいですよね。
分かりにくいので、例を挙げてみましょう。
例えば…
建設業を営む株式会社未来には、Aという取締役がいます。
Aは株式会社未来で3年間、人事部長をしていました。
その後取締役に就任し2年が経過しました。
この場合、取締役Aは経営業務の管理責任者になることはできるでしょうか?
答えは、1人で経営業務の管理責任者になることは出来ません。
ただし、株式会社未来に建設業に関する5年以上の財務管理・労務管理・運営業務経験があり、直接Aを補佐できる常勤の社員さんがいる場合は、経営業務を管理する体制があるということで、要件を満たすことが出来ます。
役員Aは5年間の株式会社未来での勤務のうち、2年間の役員経験と3年間の役員等に次ぐ職責上の経験(財務・労務・業務に限る)を含んでいれば良いのです。
役員等に次ぐ職責については『役員に次ぐ』ということですので、勿論『役員としての経験』はOKですよね。
ですので、『Aの人事部長としての3年間の経験』と『Aの取締役としての2年間の経験』あわせて5年の経験と、5年以上の経験を有する常勤社員の『財務部長』『人事部長』『業務部長』に直接補佐をしてもらうことで経営業務の管理責任者の体制を確保することが出来ます。
次に体制モデル②についてです。
建設業を営む株式会社未来には、取締役に就任して2年のBがいます。
Bは以前、運送会社の取締役に就任しており、その年数は3年間です。
この場合、体制モデル①と同じように、Bだけでは経営業務の管理責任者としての要件を満たすことは出来ません。
Bは通算で5年間の役員経験が有りますが、建設会社で2年、運送会社で3年の経験です。
1人で経営業務の管理責任者になることが出来るのは、建設業を営む会社で役員経験が5年間あるということが証明された場合です。
今回は『Bの建設会社での2年間の役員経験を含む通算5年間の役員経験』が証明され、Bを直接補佐する5年以上の経験を有する常勤社員の『財務部長』『人事部長』『業務部長』に直接補佐をしてもらうことで経営業務の管理責任者の体制を確保することが出来ます。
新しい制度では、建設業以外の業種の役員経験も考慮してくれるようになりました。
先ほどから『役員経験』とばかり言っていますが、勿論この組織体制での経営管理は、個人事業にも適用されます。
経営経験の年数不足でお困りの業者さんが、これで解決されると良いですね。
先ほどから有効な社会保険に加入していることと何度か書いているんですが、こちらも令和2年10月の改正点になります。
雇用保険・厚生年金・健康保険に未加入である場合は、どんなに他の要件が揃っていても、建設業許可申請が受理されることはありません。
また、既に建設業許可を受けている業者さんで、社会保険に未加入である場合、建設業許可の更新が出来なくなりました。
もし未加入であるならば、取り急ぎお手続きをお願いいたします。
②専任の技術者は居ますか?
建設業許可要件の2つ目は専任の技術者です。
通称『専技(せんぎ)』と呼ばれるもので、建設業許可を長年取得されている業者さんの中にも、この専任の技術者の役割をちゃんと理解されていらっしゃらない方もおられるのではないでしょうか。
どんなに良いお仕事をされても建設業法の規定を順守しなければ、処分の対象になります。
また、建設業は『元請責任』ですので自分が知らずに業法違反をしていたことで、元請さんが処分をされたり、逆に自分が下請さんの業法違反に気づかずに処分をされることもあります。
転ばぬ先の杖ということで、今日は専任の技術者って何する人?というのを知ってもらえたらと思います。
専任の技術者は、許可業種についての工事内容を理解し、工事請負契約の締結及び施工を適切に行うために営業所に常勤して、専門的に業務に従事する人です。
許可業種についての専門的な知識を有する必要があるので、許可を受けようとする全ての業種について、専任の技術者が必要になります。
営業所に常勤してとあるように、現場に出るのがメインのお仕事ではなく、営業所でのお仕事に専念する必要があります。
ですので、専任の技術者が専任性のある工事で配置技術者となることや、営業所から遠く離れた現場で配置技術者となることも出来ません。
専任性のある工事については、またの機会に詳しく書きたいと思います。
専任の技術者は、資格者または実務経験者を営業所ごとに配置する必要があります。
一般建設業許可で専任の技術者になれるのは
② 10年以上の建設工事の施工に関する技術上の実務経験を積んだ方(電気工事・消防施設工事は無資格で工事に携われません)。
③ あとは国家資格等をお持ちの方(一定の資格に関しては、資格取得後実務経験が必要になります)。
以上の方が専任技術者になることができます。
一般建設業許可の場合
- 学歴+実務経験
- 10年以上の実務経験(電気工事業・消防施設工事業以外)
- 国家資格等の取得
特定建設業許可の場合は、国家資格者であっても1級をお持ちの方に限定されます。
特定建設業で認められる実務経験は、一般建設業の場合の実務経験とは違い要件が厳しくなっています。
元請の立場で、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいい、請負代金については税込で4,500万円以上の工事の経験に限る。
ガイドラインの言葉を引用したので、難しい言い回しになってるんですが、要は…
② 工事を取り仕切る立場で
③ 技術面を総合的に指導監督し
④ 金額が4,500万円(税込)
この4つの要件をすべて満たした場合だけ、特定建設業の実務経験として認めてくれるというわけです。
「3.『特定建設業』と『一般建設業』って何?どっちを取れば良いの?」でご説明したとおり特定建設業は、かなり大がかりな工事を施工するわけですので、しっかりとした技術力を持つ業者でなければいけません。
また、土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の『指定建設業』に関しては、特定建設業の専任技術者には実務経験者はなれず、下の①と③の技術者のみが特定建設業の専任技術者になることができます。
特定建設業
② 一般建設業許可の専任技術者の要件 + 指導監督的実務経験(元請で4,500万円以上で通算が2年以上)
③ 大臣の認定者
※指定建設業・・・土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種の特定建設業許可については、専任技術者は実務経験者が就くことが出来ず、一級の国家資格者又は国土交通大臣特別認定者であることが必要です。
③財産的要件について
建設工事の請負契約を履行するためには多額の資金が必要になります。
資金が無ければ手抜き工事になったり工事の途中で会社が倒産してしまう等、社会的な反響が大きいため、財産的要件はかなり大事な要件の一つです。
財産的要件に関しても扱う工事の規模に鑑み、一般建設業と特定建設業では厳しさがかなり違ってきます。
それでは先ずは一般建設業の財産的要件について、説明していきましょう。
一般建設業
申請時点において、次のいずれかに該当する場合は、倒産することが明白である場合を除き、請負契約を履行するに足りる財産的基礎や金銭的信用があるとして取り扱われます。
② 金融機関の預金残高証明書(残高日が申請日前4週間以内のもの)で500万円以上の資金調達能力を証明できる。
③ 許可申請直前の5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること。(更新時はこの基準に適合するものとみなす)
大前提として、倒産するのが明白であったら財産的信用なんてありませんよね?
ということで、本当に資金繰りが大変な業者さん以外は、上の①~③のどれかに該当したら、財産的要件はクリアということになります。
①の自己資本ってどこ見たら分かるの?ってことですが、決算書の貸借対照表を見てください。
個人事業の場合は期首資本金+事業主借勘定-事業主貸勘定+事業主利益=500万円あれば良く、法人の場合は右下部分の純資産合計額が500万円あれば良いのです。
- 自己資本=資本の部=(資本金+資本剰余金+利益剰余金)
ちなみに自己資本と他人資本というのがあり、自己資本は返済の必要のないお金ということで、その額が大きければ大きいほど経営状態が安定した良い状態ということです。
直近の決算書を見ていただいて、自己資本が500万円以上あれば財産的要件をクリアしたということになります。
建設会社を設立する際は資本金を500万円にした方が良いと聞いたことが一度はあるのでは無いでしょうか?
個人事業からの法人成りで建設業許可を取得する場合、資本金を500万円にして上の計算式に当てはめると…
- 500万円(資本金)+0円(資本剰余金)+0円(利益剰余金)=500万円(自己資本)
となるわけです。
なので、次の②で説明する残高証明書を取得する手間を省くことが出来るので、建設会社の資本金は500万円が良いということになるのです。
では次に、決算書を見たら自己資本が500万円に満たなかった場合はどうするのかと言うと、先ほど申し上げた②の『金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書』を準備することになります。
通帳のコピーではなく、預金残高証明書ですので注意してください。
一般建設業の財産的要件については建設業許可の新規申請時に確認し、更新までの5年間倒産することなく営業出来たということは、財産的要件を満たしているとみなしましょう!という風になっています。
特定建設業
許可申請時の直前の決算期における財務諸表において、次のすべてに該当するものは、倒産することが明白である場合を除き、発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が8,000万円以上のものを履行するに足りる財産的基礎を有すると取り扱います。
② 流動比率が75%以上であること。
③ 資本金の額が2,000万円以上であること。
④ 自己資本の額が4,000万円以上であること。
※5年後の更新時に特定建設業の財産的要件に適合するか再審査があります。
特定建設業許可は財産的要件についても、とても厳しい要件となっています。
①の欠損額が資本金の額の20%を超えないって言われても…
もう何言ってるのかさっぱり意味がわからん!ってなりますね。
めちゃくちゃザックリ簡単に言うと、繰越利益剰余金がマイナスだとダメな可能性があるということです。
- 企業の誕生から今までの売上 – 企業の誕生から今までの経費 = 繰越利益剰余金
なので、黒字が続けば繰越利益剰余金に利益が蓄積されていきます。
そこがマイナスということは、経営状況がよろしくないということなんです。
ですので、特定建設業許可を取得し維持することが厳しくなります。
次の②の流動比率が75%以上っていうのは
- 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 = 流動比率(%)
この式に当てはめて計算した時に75%以上だったらこの要件はクリアということになります。
③の資本金の額が2,000万円以上あることで、個人事業の場合は期首資本金が2,000万円以上あれば要件を満たします。
④の自己資本が4,000万円以上あることは一般建設業でご説明したように
- 個人事業の場合は期首資本金 + 事業主借勘定 + 事業主利益 = 4,000万円
- 法人の場合は純資産合計額が4,000万円
である必要があります。
特定建設業の財産的要件は下請業者保護の観点から、一般建設業のように『5年間無事に営業出来たから要件クリアとみなしましょう!』というように優しくはありません。
財産的要件の確認のタイミングは、毎年の決算変更届の時点ではなく5年後の更新時になります。
④欠格要件と誠実性
欠格要件とは、経営陣がこういうのに該当する人だったら『許可してはいけません』というものです。
ですので該当しなければOKです。
ただしこの欠格要件について軽くお考えにならにようにしてください。
経営陣に該当者がいた場合、新規の場合は許可を受けることが出来ませんし、更新時の要件確認で欠格要件に該当するとなれば、許可の取消となります。
欠格要件については、申請側からは『誓約書』という一枚もんの書類に、代表社印を押印するだけの簡単な手続です。
しかし許可行政庁側では、申請後にかなりしっかりとした調査が実施されます。
申請時や更新時に、行政書士から「欠格要件に該当しはる人いませんよね?」と聞かれて何となく「いないいない。」と即答せずに、お調べいただくようお願いいたします。
欠格要件
※役員、相談役、顧問等、支店長、総株主の議決権の5%以上を有する個人の株主又は個人の出資者
② 建設業許可を取消されてから5年を経過しない者
③ 禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、又は執行を受けることがなくなってから5年経過していない者
④ 法、又は一定の法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、又は執行を受けることがなくなってから5年経過していない者
⑤ 暴力団員等がその事業活動を支配する者…等
制限行為能力者であったり、破産して復権を得ていなかったり、建設業やその関連する業種において法律違反をして処分されたり。
警察のご厄介になっている人や反社会的勢力に所属する方が経営陣にいる場合も欠格要件に該当するのでご注意ください。
誠実性
建設業許可を受けようとするものは、『誠実性』を有することが必要で、ここでいう『誠実性』を有するとは、『許可申請を行うものが請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがないこと』です。
『不正な行為』とは、請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為をいいます。
『不誠実な行為』とは、工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為をいいます。
不正や不誠実な行為をするおそれが明らかでは無い場合は、基準に適合しているとみなされます。
真面目に頑張っておられる業者さんは、大丈夫だと思います。
⑤営業所はありますか?
ついに最後の要件です。
長いお話に付き合っていただいてありがとうございます。
それでは最後の営業所要件についてご説明していきたいと思います。
「2.必要な許可は『知事許可』?『大臣許可』?」で軽く触れたとおり、建設業の営業所は建設業の請負契約を締結する事務所です。
建設業の営業所というためには原則として以下の要件に全て該当する必要があります。
② 建物の外観又は入口等において、申請者の商号又は名称が確認できること
③ 固定電話、事務機器、机等什器備品を備えていること
④ 許可を受けた建設業者にあっては、営業所ごとに建設業の許可票を掲げていること
⑤ 支店等の代表者が常勤しており、かつ契約締結等に関する権限を申請者から委任されていること
⑥ 専任技術者が営業所に常勤して専らその職務に従事していること
①~⑥に該当すれば営業所として認められます。
営業所繋がりで、要件以外のお話しを少しさせてもらおうと思います。
A社は本店の他に、営業所があったとします。
建設業許可を受ける前は、本店と共に営業所においても軽微な塗装工事を請負っていました。
しかし、建設業許可申請時に営業所で常勤の専任技術者を置くことが出来なかったので、本店だけが塗装工事業の建設業許可を受けました。
さあこの場合、営業所は引き続き軽微な塗装工事を請負うことが出来るでしょうか?
答えはNOです。
『許可を受けた業種については軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、届出をしている営業所以外においては当該業種について営業できない。』と建設業事務ガイドラインに記載されているため行うことが出来ません。
かなり長くなってしまいましたが、建設業許可申請のための要件についてご説明させていただきました。
何となく、建設業許可に必要なことや気を付けないとダメなことについてお分かりいただけたでしょうか?
これらの要件をクリアしていることを証明するためには、多くの疎明資料が必要になります。
弊所では、建設業許可申請から公共工事受注のための経営事項審査申請(経審)、入札参加資格申請まで対応しています。
もしも建設業許可申請でお困りであれば、一度ご相談ください。
建設業者様をサポートさせていただければと思います。
ご相談から建設業許可までの流れ
① | 電話かメールにて面談のご予約をお願いいたします(初回相談無料、2回目以降は5,000円/h)。 |
---|---|
② | 面談にて建設業許可の要件を確認させていただきます。 |
③ | ご依頼いただけるのであれば、建設業許可申請の請負契約書を作成します。 |
④ | 押印書類を作成します。 |
⑤ | 本店にお伺いさせていただき、必要書類のお預かり、営業所の写真撮影、実費のお預かり、押印書類へ印鑑を頂戴いたします。 |
⑥ | 書類作成、各種証明書を取得します。 |
⑦ | 許可行政庁へ申請(大阪府の標準処理期間は補正が解消されてから30日です) |
⑧ | 申請(補正解消)から30日後に建設業許可通知書が貴社へ送付されます。 |
手続報酬について
事件名 | 報酬額(税別) | 摘要 |
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建設業許可申請 (法人・新規・知事許可) |
160,000円~ | 許可の種類・会社の規模・経営管理責任者・専任の技術者の要件により増額あり |
建設業許可申請 (個人・新規・知事許可) |
150,000円~ | 許可の種類・事業の規模・経営管理責任者・専任の技術者の要件により増額あり |
※手続報酬とは別に、新規申請には許可行政庁へ払込む申請手数料90,000円(大阪府)と各種証明書の実費が発生いたします。
実務経験で専任技術者となる場合は、追加料金3万円~を頂きます。