「完成工事高は去年より上がっているのに経営は楽にならない。」
そういう場合は、大抵粗利率の悪い工事が多いということが考えられます。
今回の工事は赤字だけど、次は儲かるからプラマイゼロって思っていたけど、数字を見てみたらゼロにはなっていなかった。
こういうこともありますよね。
経審で良い点数を取ることも大事ですが、経審を受けなくても会社の経営を振り返ることってとても大事だと思うんです。
現場のことは勉強するけど、経営の数字はどうも苦手だとおっしゃる社長さんは沢山いらっしゃいます。
今回は、そんな社長さんに出来るだけ簡単に『ここに注意してください』をお伝え出来ればと思っています。
それでは、建設業者さんの『利益』に着目したお話をさせていただこうと思います。
1.建設業の売上総利益率(粗利率)は概ね25%前後
建設業の業種、工事の規模や会社の規模により変わって来ますが、売上高が1億円前後の建設業者の売上総利益(粗利率)は、だいたい25%前後と言われています。
少し古い資料ですが、国土交通省の資料を貼っておきますね。
売上総利益率、いわゆる粗利率と呼ばれるものの計算方法は
お手元に決算書があるなら、ぜひ電卓を叩いて会社の粗利率を出してみてください。
※売上総利益(粗利) = 売上高 - 原価
2.積算ミスで、本来得られる利益を貰い損ねていませんか?
利益率25%を確保するためには、原価に25%上乗せした金額を提示したら良いのでしょうか?
例えば100万円の原価だった場合、100万円の25%は25万円です。
ということは、125万円で見積書を作成したら、25%の利益を上げれることになるのかな?
それでは先ほどの粗利率の計算式に当てはめてみましょう。
25%を上乗せしたはずなのに、粗利率を計算すると20%になってしまいました。
分母が100万ではなく、125万になることで、粗利率が減ってしまうんですよね。
とても初歩的なことですが、積算に不慣れだとやってしまいがちなミスなんです。
では、25%の利益を確保するためには、いくらの見積書を作るべきだったんでしょうか?
①目標の利益を確保するためには
目標の利益が25%だった時に、どのような計算式を用いれば正しい金額になるのかやってみましょう。
目標売上高を計算するための計算式は次のとおりです。
では、先ほどの計算式に当てはめてみましょう。
目標売上高 = 100万円(原価) ÷ 75% = 1,333,333円
125万円で見積書を上げた時は、粗利率が20%になってしまいましたが、この計算式で出た金額では粗利率が何パーセントになるかやってみましょう。
1,333,333円(売上高)- 100万円(原価) = 333,333円(粗利)なので…
333,333円(粗利)÷ 1,333,333円(売上高)=24.9999%
このように、目標の25%に近い数字が出ました。
積算ミスを無くして、本来の利益を確保することで粗利率が下がることを防ぐことも大切です。
「積算や粗利率が大事だって分かったけど、でも元請にそんなこと言えないでしょ?」
というお気持ちも分かります。
「追加工事がかなり多くて、元々は利益25%確保してたんだけど、追加工事や変更が多くて、その分はサービスしてちょっと安くしようと思ってるねん。」
そういう優しいお気持ちも非常に分かります。
しかし、会社の成長のためには、やはり適正な数字というものを知っておいてもらえたらなと思います。
3.完成工事原価の見直しで粗利率アップ
売上総利益(粗利)をどうやって計算するのかというと次のとおりです。
ということは、売上高は前年度並みであっても完成工事原価を圧縮できたら粗利が増えることになります。
『そんな簡単に完成工事原価を圧縮なんて出来ないよ』って思われると思いますが、出来ることからで良いので、少しずつ、少しでも見直してみましょう。
完成工事高は前年と同額であったとしても、完成工事高を5%抑えることが出来た場合、固定費等は変わらなかったとしても利益は前年の2倍になります。
- 材料の仕入れ先の再検討
- 仕入れの際に在庫確認、在庫管理の徹底
- 発注ミスを無くす
- 全社員が経営者目線で仕事に携わるような意識改革を
- 出来る範囲の自社施工
- 適切な外注利用
もっと色々あると思いますが、出来る範囲のことから始めてもらえたらと思います。
4.最後に…
どこの建設業者さんも利益率を上げたいのが普通だと思います。
言うは易く行うは難しなんですが、先ずは社長さんの意識改革から始めましょう。
頭の隅っこにでも『赤字工事は無くして、利益率25%を目指そう』という意識を持ってもらえるだけでも違ってくると思います。
私も経営は得意な方ではありません。
しかし、尊敬する税理士さんに「経営は本来楽しいもんですよ」という言葉をかけてもらってから、楽しむ努力をしています。
努力とか言ったらまだまだ楽しめてないのがバレますね(笑)
いつか「やっぱり経営は楽しいなと」言えるように、日々頑張っていきたいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。