経営事項審査(経審)を受けて公共工事の受注を現にされていても、決算書が経審に及ぼす影響についてを、あまり深く考えておられない建設業者さんが多いように感じています。
本気で公共工事の受注量を増やし、会社を大きくすることを真剣に考えているのであれば、知っておいていただければと思います。
目次
1.経審を受けるのに、適当に決算書を作成していませんか?
決算業務は煩わしいと思うのが一般的で、私も自分のは面倒くさいなと思っています(笑)
しかし、経審を受ける建設業者さんなら、面倒くさいなんて言わないで、良い決算書を作って欲しいと思います。
誰もが気にする点はきっと、
- 完成工事高
- 赤字か黒字か
- 税金をいくら払わないとダメなのか
この3点かな?と思うんです。
でも実は、もっと他にも気にしてもらわないとダメな事がいっぱいあるんですよ。
2.経審のP点に、決算書の内容がどれだけ影響するか見てみましょう
以前、『経審の評点UP対策と経審の点数の見方について詳しく解説!』という記事で経審の見方を解説させていただいたんですが、そちらも一緒に読んでいただけると分かりやすいかと思います。
はい、ここで質問です。
『経審で決算内容が関係してくる項目っていくつあると思いますか?』
答えは下の図です。
赤枠で囲んでるのが決算内容が関係してくるところになります。
ガッツリ関わってくるのはこの2つ『X2(自己資本額及び平均利益額)』と『Y(経営状況)』です。
X1の完成工事高も決算書に出てくる内容ですが、少し毛色が違うので、完成工事高については、またの機会にお話しさせていただきます。
X2(自己資本額及び平均利益額)のP点への影響
このX2(自己資本額及び平均利益額)は、創業から現在までどれだけ利益を出してきたか。
また、それを蓄積してきているのかが評価される項目なんですが、これは工事業種別ではなく、経審を受ける全業種に関係する項目です。
そして、P点へは15%影響を与えることになります。
Y(経営状況)のP点への影響
Y(経営状況)は、税理士さんが作成された決算書を、建設業簿記に行政書士が組み換え、『登録経営状況分析機関』に分析申請して点数にしてもらうものです。
よく聞かれる言葉だと思いますが『税理士さんが作成される決算書と、それを基に行政書士が作成する財務諸表は別物』です。
このY(経営状況)が、P点に占める割合は20%と高く、こちらも全業種共通の点数となるのでとても大事な項目です。
決算書の内容がP点へ及ぼすのは…
X2が15%でYが20%ということは、決算内容が経審のP点へ影響するのは35%ということになりますね。
それに、どちらも工事業種に関係なく影響するのでかなり大事だということが分かってもらえたと思います。
なので、決算書は赤字か黒字かだけではなく、経審を受ける上で良い決算書を作る事が大切になってくるんですね。
3.経審における『良い決算書』と『悪い決算書』ってどう違うの?
良い決算書
経審における良い決算書とは簡単に言うと次のような決算書を言います。
・ 自己資本比率が高い
・ 借入金が少ない
・ 投資目的の固定資産が少ない
・ 重機などの固定資産を保有し、減価償却をしている
・ 現預金が多い
・ 資本金が多い
悪い決算書
経審における悪い決算書は、良い決算書と逆の内容になります。
・ 債務超過状態
・ 借入金が多い
・ 投資目的の固定資産が多い
・ 減価償却をしていない
・ 減価償却をし過ぎて赤字になっている
・ 現預金が少ない
・ 資本金が少ない
4.最後に…
簡単にいうと、『良い決算書』と『悪い決算書』の違いって、こういう内容になるんですよね。
税金対策のために、決算前に必要のない物を色々購入される会社さん、ポチっと購入ボタンを押す前に一旦待ってもらいたい。
あまり必要のない物を購入して、手元から現金が消えるのは経営上マイナスでしかありません。
節税のためにと言って、決算内容が悪くなるような事をすると、もちろん経審の点数も悪くなります。
税金をたくさん払わないとダメなのは、何だか損した気持ちになるのも分かります。
不要なものを購入するのなら、そのお金で借入金を返済する方が経審の点数が上がるし、税金を多少払っても手元に現金が残った方が、事業資金として後々生きてきます。
良い決算書を作ると経審の点数がアップして、入札の格付けが上がります。
入札の格付けが上がると、より大きな工事を受注することが出来るようになります。
格付けが無い業種であっても、P点が何点からの建設業者が札入れ出来ますって足切りがありますよね?
良い決算書を作るためにお金をかけると、節税よりも、もっと良い効果が会社に跳ね返ってくるんじゃないでしょうか?
今回は、経審を受ける上での良い決算書と悪い決算書についてのお話をさせていただきました。
決算書は税理士さんにお任せしていたら出来上がってくるものではなく、建設業者さんが積極的に作っていくものです。
良い決算書を作って、ご希望どおりの入札参加資格の格付けランクに入れることを祈っています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。