公共工事を多く請負ってらっしゃる会社さんだと、経審の点数がどうなるのかは、なかなかのご心配事だと思います。
私もお客さんから「今期は赤字になってしまったよ…。経審の点数はかなり下がるのかな?」こんなご質問を受ける事がよくあります。
赤字決算だと経審の点数にどう影響があるのかについて、今回はお話しさせていただこうと思います。
目次
1.経営事項審査の構造
経営事項審査は、会社の一年間の行動を点数にする、言わば会社の通信簿です。
会社の一年間の完成工事高(売上高)、元請工事がどれだけあったのか、技術力、建設機械の保有台数、決算内容、社会的責任を果たしているか…
このような内容を点数化して、最終的に経営事項審査のP点が出来上がります。
経審の見方については『経審の点数アップ対策と経審の見方について詳しく解説!』
2.赤字が影響するか、それぞれの項目を確認してみましょう。
〇完成工事高(X1)
完成工事高(X1)は、建設業者さんが一年間どれだけ工事を施工して売上たのかを点数にする項目です。
ここの点数は、直接的には赤字の影響は受けません。
しかし、赤字の原因が完成工事高の減少によるものであったら点数は下がる事になります。
赤字の原因が、完成工事高の減少ではなく、外注費が増えたとか、材料費の高騰などによる事が原因だった場合は、この項目は影響がありません。
【ポイント】
- 完成工事高が減少していたら点数は下がる
- 完成工事高が例年並みなら問題なし
〇自己資本額及び平均利益額(X2)は下がる可能性がある
この『自己資本額及び平均利益額』というのは、経審を受ける全業種に影響のある項目で、自己資本額と平均利益額から点数が計算されます。
自己資本額
貸借対照表の純資産合計に記載されている金額が評価されます。
この数字は、直前の決算日の自己資本額と、直前2年平均の自己資本額を選ぶことが出来るので、前年度が黒字であれば、何とか持ちこたえる事が出来る可能性はあります。
前年度と今年度の自己資本額を比べて、今年度の方が下がっているのであれば、前年度よりも低い点数にはなってしまいます。
平均利益額
平均利益額とは、本業の営業利益に減価償却費を足し戻した額で計算され、前年度の額と平均することで点数になります。
本業で営業利益が減少していたら、ここは点数が下がる可能性があります。
しかし、建設機械などの減価償却を実施している場合は、その金額を足し戻すので、一概に点数が下がるとも言い切れません。
また、本業以外で赤字になっていて、営業利益に影響が出ていなければ、点数が下がることもありません。
【ポイント】
- 下がる場合が多い
- 赤字の原因や減価償却で点数が下がらない可能性もある
〇経営状況分析(Y)は下がる可能性が高い
経営状況は建設業者の経営状態を『登録経営状況分析機関』が財務諸表から点数を出してくれるもので、分析とかY点と呼ばれています。
このY点は赤字決算の影響で点数が下がる可能性が高いと思います。
負債抵抗力
大きな赤字で資金繰りが厳しくなり、借入金が増えた場合は点数が下がります。
新たに借入をして、支払利息が増加していなければ、問題はありません。
収益性・効率性
赤字決算の理由が売上の減少と経費の増加の場合は、この項目の点数が下がる可能性があります。
また、赤字ということは、利益率の悪い工事が増えたことも考えられるので、この項目の点数は下がると考えた方が良いでしょう。
財務健全性
この項目では、次の2点を点数化します。
- 自己資本の範囲内で固定資産を取得しているか
- 総資本に占める自己資本の割合はどれくらいか
赤字だと確実に自己資本額が減少しているので、この項目は確実に点数が下がります。
絶対的力量
この項目では、次の2点をチェックされます。
- 会社が1年間活動したことにより現金をどれだけ創出したかということ
- それをどれだけ蓄積したか
1年間で生み出した現金の総額を点数化される項目のため、赤字決算で経常利益が減少していているような場合は、この項目の評価が下がる可能性があります。
【ポイント】
- 絶対に下がるのは財務健全性のX5とX6
3.赤字決算で下がった点数は他で対策を
赤字決算でどれくらい点数が下がるのかは、赤字の金額やその他の状況によって変わってくるので、「大体〇点ぐらい下がります。」という風にお答えすることは出来ません。
毎年黒字だと良いのですが、その年によって波があるのは仕方のない事だと思います。
下がってしまった点数を補うために、建退共への加入や、退職一時金制度の整備などで、加点を狙って現状の格付けランクを維持できるようにする事が大切だと思います。
4.最後に…
赤字決算で経営事項審査(経審)の点数にはどんな影響があるのかとご心配されていたかと思います。
どうでしょうか?
少しだけでもご心配は解消されたでしょうか?
赤字決算だと、全部の点数に悪い影響が出るような気がしますが、他で補う事ができて案外悪い点数じゃなかったと安心される社長さんはたくさんいらっしゃいます。
ご希望の格付けランクに入られて、無事に工事を落札され、次の決算では黒字に転換されることをお祈りしております。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。